果樹の病害虫の病害虫
【家庭果樹こそ家族の健康を守る】
家庭果樹は自分で手塩をかけて栽培し、しかも農薬の使用を最小限に抑えて、栽培できるので、最も安全性の高い果実です。
戦後、農薬の発達によって、果実は「農薬づけ」で飛躍的に増産され、次いで色彩、形状、食味などが改善されました。
しかし、公害の多発によって「人間の健康を守る」ことが第一に考えられるようになり、野菜や果実の農薬被害が大きな社会問題になりました。
家庭果樹の果実は、外見の色や形状はともかく、購入果実と異なり、家族の健康を守る第一歩です。
【農薬使用は最小限に】
果樹栽培で大事なことは、綿密な観察です。
葉の表裏の内側に円や楕円形の褐色や黒色の斑点が葉脈に沿ってできたり、幹や枝に変色があるのは、発病の兆候です。
発病枝が少ない時は、発病源となっている葉を摘み取るのが、農薬を使用しないで、病気を防ぐ一番簡単な方法です。
病害虫が多発して手に負えないときは、高倍率の薄い農薬をまんべんなく散布します。
アブラムシやダニ、グンバイムシなどの吸収昆虫は、葉をよく観察すると、一部が変色していたり、虫がついていたりするので分かります。
特に、葉裏にいます。
早期に薬剤散布を実施します。
【袋かけ】
果実にハトロン紙や油紙などの袋をかけると、直接農薬がかからないので、農薬被害を避けることができます。
しかも、果実を病害虫から守ることもできるので、農薬散布の回数も軽減できます。
袋かけは大変効果のある作業といます。
とくにブドウのように小粒の実が密着していて農薬が付着しやすく、果皮ごと直接口に入れるものは袋かけが必要です。
農薬被害から身を守るためには、ブドウやナシ、モモ、リンゴだけでなく、その他の果実にも袋かけを実施されることをお勧めします。
作業は生理落果の後に、農薬散布で、確実に病害虫を防除して実施します。
【剪定で枝葉の混雑を防ぐ】
密植で混雑していたり、剪定不足で乱雑に生い茂っていては、病害虫の巣になってしまいます。
家の日蔭や樹の内側の枝葉の混雑は、各枝葉が日光や通風不良となり、光合成作用を少なくし、養分不足になります。
樹は軟弱となり、病害虫に対する抵抗力を失い、果実の肥大生長や来年の花芽の着床にも影響します。
果樹栽培での重要な管理は、剪定と病害虫防除です。
枝葉を混雑させないためには、冬期と夏期の剪定を確実に実施します。
特に大事な作業は夏期剪定です。
夏の間に幹と並行して、まっすぐに内側から強く立つ枝(徒長枝)は、必ず剪定します。
冬期剪定時には内側の太い枝は切り、結果枝間隔は広くして薄仕立てにします。
【夏の多雨は病気、乾燥は害虫多発】
病菌は主に雨水によって繁殖します。
多雨時は水滴が多く日照量が少なく、湿度が高いので病菌の活動が盛んです。
病害の多発に対しては降雨前に、病原菌を殺菌しておけば防止することができます。
雨前薬剤散布の実施と病菌の根源を断つ、早期防除が必要です。
乾燥すると害虫が発生します。
特に吸収昆虫のアブラムシやダニが多発します。
ダニは1週間くらいの間に葉を落とし始め、2週間くらいの間にほとんど落葉させるという被害を与える恐ろしい害虫です。
アプラムシと同じで、ほとんどの果樹に発生します。
夏乾燥したら害虫が多くなるので、よく観察し、初期防除を徹底させなければなりません。
【冬期に病害虫の根源を断つ】
果樹をはじめ樹木の害虫は、成虫や幼虫、あるいは卵で越冬するものなど、色々あります。
ほとんどの害虫は幹や枝、根元、落葉などに付着しています。
晩春から初夏になり、温度が上昇すると急激に繁殖を開始したり、幼虫は成虫に、卵は孵化して盛んに活動を展開します。
病気も全く同じで、樹についている病害虫の根源を冬期に立ちきってしまえば、晩春から初夏にかけての病気や害虫の発生をかなり防げます。
冬期防除はまた、薬剤使用の人間の健康に及ぼす被害が少なく、樹木にも薬害のない冬期から初春にかけて実施します。
薬剤はマシン油乳剤と石灰硫黄剤です。
両剤はともに下記の生育期間中に使用すると薬害が出るので、休眠期間中の冬期から早春に実施します。
マシン油乳化剤は害虫だけに、効果がありますが石灰硫黄合剤は病気と害虫に有効です。
マシン油乳剤は落葉樹では20〜25倍、カンキツ類などの常緑樹では35〜40倍、石灰硫黄合剤は、落葉樹では10倍、常緑樹で40倍ぐらいで散布します。
風のない晴天の日を選んで、均一にたっぷりと散布します。
【病害虫防除は4〜5月が肝心】
越冬病害虫は4月中旬〜5月の温度と湿度が高くなるに従って、いっせいに活動を始めますので、この時期の防除が最も大事です。
これを逃すと、年間発生の主な要因になります。
多くの果樹栽培者は、この時期には、数日おきに薬剤散布を実施します。
少なくとも、1ヶ月の間に5〜7回ぐらい実施します。
特にアブラムシはバラ科のウメやアンズ、モモ、ナシ、オウトウなどに大被害を与えます。
ウメやモモは、若葉の時期にアブラムシの被害を受けるとなかなか立ち直ることができなくて、果実が肥大しなくなります。
植物の「病気は予防」、「害虫は駆除」とよく言われますが、病気は発病の予感、あるいは少しでも発見次第、すぐに手で取るか薬剤の散布を、害虫は見つけ次第駆除します。
【薬剤散布の注意点】
現在市販されている農薬は、安全基準が設定され、直接あるいは間接的にも人畜に悪影響のないようになっています。
しかし、使用に当たっては、肌を覆って保護できるような衣服やマスク、ゴム手袋、メガネなどを用意し、隣家には薬剤散布実施を告げるなどの注意が必要です。
次に薬剤の種類やその特性、効果、使用方法などを知っておく必要がありますので、理解し安いように箇条書きに列挙します。
薬剤の形態
乳剤、液材、水和剤、水溶剤、粉剤、粒剤、油剤などがあります。
薬剤の種類
殺菌剤、殺虫剤、除草剤、生理活剤などがあります。
殺菌剤の種類と特性
直接殺菌剤は病原菌や菌糸にかかると死にます。
予防殺菌剤は病気を侵入させないように予防します。
抗菌剤は、菌で菌を防除します。
殺虫剤の種類と特性
食毒性殺虫剤は虫が薬剤を食べると死にます。
接触性殺虫剤は虫に薬剤がかかると死にます。
浸透性殺虫剤は虫が葉や茎を食べると死にます。
ガス剤は虫がガスを吸って死にます。
薬剤は有効成分が高いので、量は正確に測り、必要な水の量も正確にして薄めないと、薬害を起こしたり、効果の上がらない散布となります。
風の吹く日は散布は中止。
実施のときは風上から行います。
葉裏までよく散布するように、噴出圧をあげて霧を細かくします。
作業中の飲食は控え、子供は近寄らせないようにします。
使った器具や衣服は、洗うようにします。