クリの木は世界の温帯を中心に10種ほどあり、ヨーロッパ種のマロングラッセや中国主の天津甘栗など栗の実を用いた有名な菓子類も多い。
日本では病害虫の関係から外国原産のクリは育ちにくく、現在国内で栽培されるクリは、ほとんどが日本原産の品種です。
日本のクリは渋皮がむけにくいが、実は大きいのが特徴です。
果実は堅果で、熟すにつれて、いがの頂部が4裂開して果実は落下します。
クリの葉は有柄で互生し、長楕円状波針形または狭長楕円形です。
日本のクリの木は古くから近畿の丹波、但馬地方を中心に、自生したり栽培されたりしており、実は保存食として重宝していました。
そして、万葉歌人の山上憶良の歌にも「爪食めば 子供思ほゆ 栗食めば まして偲ばゆ…」という一首がありますが、これ以降も長い間貴重な食料として、栽培も各地に広まりました。
現在、日本のクリは茨城、愛媛、熊本などを中心に栽培され、年間47000トンも収穫をあげていますが、甘栗などには、中国からかなりの量が輸入されています。
また、栗の木は腐りにくいので木材としても重要で、家具用材、建築用材、木炭用材、鉄道の枕木などとしてよく用いられ、樹皮はタンニンの原料になるなど、幅広い用途があります。
植える時期:
クリの植え付けや植え替えは、2〜3月または11〜12月です。
特に寒い時期、土が凍結するときは避けます。
植え方:
クリは大木になるので広い庭が必要ですが、限られた広さの庭で栽培するときは、木の性質を生かして屋根の上に枝が張るようにして育てます。
また、クリの木は1本植えでは受粉しにくいので、必ず異なった品種の苗木を、1〜2本植えます。
こうすると、風や虫によって受粉しやすくなり、実つきもよくなります。
植える場所:
日本のクリの栽培適地は、関東以西の温暖な地方で、水はけのよい土壌か砂礫混じりの土壌が最も適しています。
クリは極端な寒さや暑さには弱く、寒さの厳しい地方では地際に凍害を受けて胴枯れ病になりやすく、逆に、暖かい地方ではカミキリ虫の被害を受けやすい傾向があります。
クリはふつう大木になるので、広い面積の取れない家庭で栽培するのは、あまり適当ではありません。
しかし、剪定で調整するシダレグリなら、狭い場所でもそれなりに収穫できるほか、庭木としても十分楽しめます。
剪定やお手入れ:
クリは苗木を植え付けたら、接ぎ目の部分から30cmぐらい上のところで切り詰め、2年目に先端部から出た枝をまっすぐ伸ばして幹の延長にします。
また、他の枝2〜3本を将来の主枝候補として残し、先端は1/3ぐらい切り詰めます。
3〜4年目は同様ですが、5〜6年目には幹の延長枝の伸びが鈍ってくるので、先端の枝はそのままにし、数段下の横向きの弱い枝を切って枝を開かせます。
クリの剪定は、間引き剪定を主体に3月に行いますが、クリの枝は日陰になると枯れてしまうので、日陰ができないように剪定するのがポイントです。
樹形は変則主幹形に仕立てますが、込んだ状態のところは側枝を間引き、徒長枝はもとから切り取ります。
また、樹冠の面積があまり大きくならないように仕上げます。
主枝候補の選び方としては、なるべく枝の角度が広いものを残します。
角度の狭い枝は避けやすくて主枝には不適当です。
それ以外の枝は3年ぐらいで、段階的に間引き剪定をします。
クリは植えてから3〜4年すると、前年伸びた充実した枝の先端に花芽がつき、葉のつけ根に雌花と雄花が咲きます。
そこで、実をならせるためには、冬期剪定でこうした枝を切り詰めてしまわないことが肝心です。
注意する病害虫:
クリタマバチ:
6月下旬ごろから成虫が発生し、芽の中に1〜2個ずつ産卵します。
1匹の虫が200個以上の卵を産み、春になるとこの卵がそれぞれの部分を球状にして膨らませるので新梢が育たず枯れてしまいます。
適当な防除法がないので、耐病性の品種を選ぶようにします。
クッサン:シラガタロウともいい、クリの大敵です。
これがついたクリの木は、若葉が食いつくされてしまいます。
胴枯病:
胴枯病は樹皮が黒褐色になり、裂けてしまう病気です。
防除法としては、樹皮を傷つけたり、害虫や寒害にあわせないことです。
胴枯病に侵された部分は削り取り、バルコートを塗ります。
1941年、日本のクリは岡山県内から発生したクリタマバチという害虫によって、全国的な被害を受け、それ以降、国内ではクリタマバチに強い品種を中心に栽培されています。
豊多摩早生(トヨタマワセ):
豊多摩早生の樹勢はあまり強い方ではないが、8月中旬〜下旬に収穫できる。
実は小粒で15gぐらいです。
森早生(モリワセ):森早生の樹高は4mぐらいで、収穫期は8月下旬。
実は18gぐらいになります。
丹沢(タンザワ):丹沢は肥えた土地が適し、収穫は9月上旬です。
実は20gぐらいになります。
筑波(ツクバ):
筑波は中生種で、実付きがよく、品質も優れています。
9月中旬〜下旬に収穫でき、実は20gぐらいになります。
銀寄(ギンヨセ):
銀寄は中生種で大粒の品種として昔から有名ですが、実付きがあまりよくありません。
収穫期は9月下旬〜10月上旬で、実は20〜25gほどになります。
利平(リヘイ):
利平は戦後、岐阜県大桑村で、土田健吉氏によって発見された日本のクリと中国のクリの一代雑種。
中国種ほどではないにしても、渋皮むけが、国内品種よりずっとよい品種として評価され、昭和25年に農林省の種苗名称登録を受けています。
紫黒色の実は23gぐらいあって、収穫期は9月下旬〜10月上旬で、焼き栗に適しています。
岸根(ガンネ):
岸根は収穫期が10月で、実つきの一番遅い品種です。
実は大きい方で30gぐらいあり、イがも大きく見栄えのする立派な栗です。