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沈黙のファイル -瀬島龍三とは何だったのか-共同通信社社会部

陸軍大学校を首席で卒業し、参謀として軍でエリートコースを進みながらも敗戦を迎え、その後10年以上のシベリア抑留を経て帰国。帰国後は数々の誘いを断り、伊藤忠商事に入社し、スピード出世と同社の躍進に貢献し、中曽根総理の懐刀としてNTTの民営化などに活躍をした瀬島龍三についての本のようなので、読んでみることにしました。

太平洋戦争の頃や軍についての知識はあまりないのですが、その後の活躍からか、瀬島龍三という名前は知っていました。

そして、山崎豊子の不毛地帯の主人公は瀬島さんがモデルだし、沈まぬ太陽にも瀬島龍三をモデルとした人物が少し出てくることからも興味がありました。

あと、友人が伊藤忠商事におり、何かのあいさつの際に、乾杯の音頭を取るときに、それまで政界の偉い人と会っており次の総理を誰にするか話して追ったなどと言っていたとか。ずいぶんお歳だったので手がぶるぶる震えて、完売する頃にはビールがほとんどこぼれていたそうです。


沈黙のファイル―「瀬島 龍三」とは何だったのか 新潮文庫

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さてさて、肝心の本書の感想ですが、瀬島龍三については正直言って新しい発見はありませんでした。

この本が出た頃には、これが最も詳しく書かれたものだったのかも知れませんが...


それよりも辻正信や服部某(失念しました)などの他の当時の参謀の人たちが、戦後も政界やら財界などで活躍しているのがとても印象的でした。
特に辻氏は国会議員に転身し、最後は東南アジアで失踪してしまうというすごいことになっています。
う〜ん、この人についてもっと読んで見たい気もします。

辻氏を通して、伊藤忠商事(瀬島氏)がインドネシアや韓国に対しての戦後補償をビジネスにしてみせるあたり、どんなところにもビジネスチャンスはあるのだなと感心します。
昭和の大フィクサー、児玉誉士夫も一役買っています。このような方達の権力の握り方や人や組織の動かし方を勉強してみたい気がします。
そういえば、本書の中にも誰かへのインタビューの中で、瀬島氏の根回しの旨さと、組織を動かす力に驚いたとありますが、是非学びたいものです。

この本を読んで思ったのは、戦中、戦後にも軍部は全員が同じ方向を向いていたわけではなくて、それぞれが、それぞれの思惑や願いが交錯し、何かがきっかけとなりある方向に進んでいったのだな〜と感じました。
現在も、組織がちょっと大きくなれば、皆がその組織の利益を最優先に考えるわけではなく、個人の利益を優先したり、組織の目標自体を同じものとは認識できずに、権力争いや綱の引き合いが発生していると思います。
そして、日本人は本当にお尻に火が付くまで、なかなか自浄作用は起きないと思います。
今も昔も同じですね...


それにしても満州から民間人が撤退してくる道程の話は泪が出てきました。

軍は民間人を守ってくれなかったんですね...
自分たちの保身というか、大義の名の下に個人や民間人を犠牲にするなんて...
人があっての国家だと思うのですが、天皇の国家が優先されていたんですね。


2013/3/16


採点:★★★★









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