宮部みゆき氏の出世作とも言われている
魔術はささやくを読みました。
宮部氏の作品と言えば外れが無いのですが、ちょっと長いので最近は敬遠していましたが、先日読んだ
孤宿の人が思いの外良かったので、宮部作品を読んでみたくなりました。
デビュー後まもなく本作品で日本推理サスペンス大賞を受賞し、一気に人気作家への階段を駆け上っていったのだそうです。
ということで、かなり期待できそうです。
宮部氏の作品らしく、その時代の世相を良く反映した作品だと感じました。
願わくはタイムリーに読みたかったです。とはいえ、今読んでも決してこの作品の魅力が色あせているとは思いませんでしたけど。
次々と亡くなっている女性達の関連性やその死の謎、主人公の生い立ちや苦労、養父の事故などが複雑に絡み合って物語が進んで行きます。物語の進み方がとても巧妙で、ぐいぐい物語に引き込まれてしまいました。
------------------------以下、ネタバレ注意----------------------------------------
次々に死んでいった少女達。
その死は事故や自殺にしか見えないが、彼女たちには過去につながりがあることが分かり、そのつながりこそがこの殺人の動機と密接に関係していることが分かります。
だけど、この死に方からはどう考えても自殺や事故にしか見えず、殺人事件であることを立証するのは困難であり、それ以前にいったいどうやって殺しているのか?
how done it, who done it, why done it?の全てが謎です。
このhowというか殺人のトリックですが、後催眠というのは少し犯則じゃないかと思います。催眠術だったらある意味何でも出来ちゃいますよね・・・一見、不可能なことも。
ただ、催眠術にかけて自殺しろとかというのは防衛本能が働くので不可能で、それを可能にしているトリックは語られています。とはいえ、やっぱり、ちょっと催眠術はひどい...
とはいえ、この物語のメインテーマがどう彼女たちを殺したという事だけに集約されているわけではないので、これだけで台無しになるというほどではないかなと。
それよりもこの物語で描かれているのは、最後のシーンに集約されている気がします。
良くしてくれるおじさんが実は実父を殺した犯人であり、その犯罪/事故を隠蔽したために、その後の主人公の人生は壮絶なものになってしまった。ただ、そのおじさんは罪滅ぼしとして彼にはとても親切にしてくれている。そんな中、前述の女性達を催眠術で死に追いやった犯人がこの男性にも催眠術をかけており、主人公が望めばキーワードをささやくだけでこの男性に自ら死を選ばせる事ができ、復讐が果たせる状態になります。
果たして主人公はどうするのか?
復讐を選ぶのか?今の平和な好転し安定し始めた人生を選ぶのか?
主人公だけでなく、殺されてしまう女性達の過去の過ちやそれに対する本人達の感情や意識、犯罪者や不幸な人間に対する世間の非常な仕打ちなどなど、時代をきっちりと切り取った上で登場人物を非常に生々しく描き出しているなと感心します。
やはりこれが宮部作品の最大の魅力のような気がします。
でも、それだけにやはりタイムリーに読んだ方がいいんでしょうね...
2013/08/03
採点:★★★★☆
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