桜庭一樹の赤朽葉家の伝説を読みました。
どんなきっかけで購入したのか忘れてしまいましたが、本棚に入っていました。
調べてみると、第60回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門受賞。第28回吉川英治文学新人賞、第137回直木三十五賞、センス・オブ・ジェンダー賞、本屋大賞の候補だそうです。
後日、「私の男」で直木賞を取ったらしいので、その作家の作品だったから購入したのか?
もしくは本屋大賞の候補になっていたからか?
ともあれ、桜庭氏の作品は初めて読みます。
赤朽葉家の女性3代を描いたサーガでした。
この方の作品を読んだことがない上に、本作品についての予備知識が全くなかったため、どんな物語か分からず、最初はなかなか読み進めるのが大変でした。
1/3ほど読んだら止まらなくなりましたが。
物語は戦後の紅緑村~21世紀までの鳥取県の紅緑村を舞台に名門一家である赤朽葉家が舞台です。
最初は赤朽葉万葉、山の民に村に置いていかれた不思議な力を持つ女の子が村で拾われて育ち、名門、赤朽葉家に嫁に入ります。不思議な力は千里眼で遠くが見えたり、未来が視えたりします。
山の民はどうもサンガをイメージしているような印象を受けます。
次がその娘の赤朽葉毛毬(ケマリ)、レディースの総長として中国地方を統一、その後、売れっ子漫画家になり10年以上にわたり自分の青春時代を描いた作品でヒットを続けますが...
最後が、毛毬の娘の瞳子(トウコ)。一番普通の女性で、万葉と毛毬の話を聞いて育ちますが、万葉が死の間際に残した「昔、人を殺した」と言う言葉から、その謎に取り組みます。
物語全体を通して、戦後から高度成長期、バブルとその崩壊、21世紀の停滞感と時代の特徴を端的に捉え、それをそれぞれの登場人物の行動や精神状況にとても上手く反映させている気がします。
しかも、特に閉塞感というか、何かに必死に取り組んでいても同時に感じる虚しさというか寂しさのような感じがとても上手く描かれている気がします。
また、登場人物(赤朽葉一族)の名前がとても独特で少し新鮮です。
覚えやすいし。
この名前は万葉を赤朽葉家の嫁として迎えることを決めた先代のタツがつけるのですが、最後の瞳子もタツの考えでは「自由」になる予定だったようです。
他にも、夭折する毛毱の兄は「泪」、妹は「鞄」、弟は「孤独」です。
それぞれのキャラクターに様々な物語があり、とても楽しむ事ができました。
赤朽葉家を取り巻く、穂積家や黒菱家、多田家のそれぞれの登場人物もとても活躍します。
赤朽葉家の男女や上記の登場人物達のそれぞれのエピソードを書き出したい気分ですが、いっぱいありすぎて止め処ないので止めておきます。
本作品についてあれこれ余計な賞賛や感想を書くよりも、各々のエピソードを書き出すだけでもこの物語の魅力を十分に伝えられる気がします。
全体を通して少し不思議な雰囲気の中で、淡々と物語が進みます。
これには万葉の不思議な力やタツの思い切った行動、不思議な山の民の存在、戦後の日本で何が真実で何が夢物語か分からない状態、毛毬の常識離れした活躍などがその要因だと思うのですが、前述の通り、それぞれの時代の特徴をきっちりと切り取って、それぞれの登場人物の行動や悩み、考え方に的確に反映させているので、恐ろしいほど現実的にも感じられます。
この淡々とした感じが悲しいシーンでは悲しさをより一層際立たせ、恋愛や結婚(それが幸せなものでも葛藤のあるそうでないものでも)どこか悲しみや達観を感じさせる雰囲気を醸し出しています。
こんな感じの物語は読んだことがなかったので、とても新鮮でした。
いや~、桜庭作品、堪能させていただきました。
他の作品も読んでみたいと思います。
2013/02/18
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