伊坂幸太郎のモダンタイムスを読みました。
10日ほどの海外出張が入ったので、移動中の暇つぶしにでもと思い購入しました。
これは氏の以前の作品である「
魔王」の続編ともいえる作品のようです。
伊坂作品はたいていがお気に入りなのですが、左にあるランキングを見ていただくと最下位となっています。
かなり消化不良な作品でした。
ということで半信半疑での読み始めとなりました。
読み始めて一気にこの物語の世界観に引き込まれました。
会社から帰ったらいきなり怖いお兄さんに拷問されて、「勇気はあるか?」と問われます。
これは浮気を疑った妻の雇った人間なのですが...
舞台は2050年頃の日本で、前作の魔王からは50年ほど未来の設定です。
とはいえ、読み進めないと魔王とつながっていると気づかないですし、魔王を読んでいなくても物語は十分に楽しめると思いますので、魔王を読んでおく必要はないと思います。
それどころか、モダンタイムスというすばらしい作品のスピンオフとして、その登場人物の過去の物語として補完的に読む程度でよいかと。
魔王を読んだときには、こんな中途半端な作品と腹が立ちましたが、モダンタイムスのデキがあまりにもすばらしかったので、魔王もすばらしい作品だったと感じるほどです。
主人公はあるIT企業に勤めるシステムエンジニアで、請け負った仕事からとてつもない謎に巻き込まれていくというお話です。この流れにも伊坂節がふんだんで、楽しみながら物語に引き込まれていく過程がとても気持ちいいです。
物語全体を通して描かれているモノとしては、世の中の流れはシステムや体制、仕組みなどで方向付けられており、個人がどんなに抵抗してもそれに抗うのは難しいということでしょうか。これは魔王の時にも描かれていたモノだと思いますが、それがよりはっきりと描かれているように感じます。
確かにここで描かれているように、世の中の流れには誰か個人の黒幕が存在するというわけではなくて、システムによって全体的な大きな流れが方向付けられ、その中で個人や組織などの陰謀が渦巻いているのだと思います。
最近、組織をどう動かすのか?同じ方向に向かせるのか?と言うことを深く考えていたので、その答えに出会った気がしました。モダンタイムスや魔王はシステムによって作られる大きな流れに抗う個人や小さな集団の立場から描かれていますが、反対からの視点として参考になりました。
組織の向かうべき方向性やゴールを設定して、それに向かって進め!と号令しても、物語の中にも描かれているように人間には個性があり、単純にその方向に進ませるのは難しく、どうしたらよいのかと考えていました。国内の小集団ですら難しいのに、海外オペレーションまで統率するにはどうしたらよいのか?と...
確かに各国の文化の違いやビジネス習慣の違いなどがあり、それを尊重して現地オペレーションを進める必要はあると思いますが、組織全体の方向性や価値観は共有する必要があると思います。
その悩みにひとつの解答のヒントをくれたのがこの作品だと思います。
海外でのオペレーションをマネージするには標準化がキーだと考えていましたが、それに加えて、もっと大きな観点からシステムを構築していくのが必要なのだと、その標準化の使い方が分かった気がします。
大きなオペレーションの流れのなかで、個人や組織、地域の差によって違う方向に進みそうなところには標準のフォーマットやツールを設定することにより、同じ方向に流れるように強制するような仕組み、そのシステムの構築と標準類の整備がカギになりそうです。
少し話がずれてしまいましたが、物語を楽しむだけでなく、仕事上での悩みの解決にもヒントを与えてくれた作品でありとても有意義でした。物語も非常に面白く、最高傑作に近いのではないかと思います。
映画でも見てみたい気がしますが、作品中に映画化では小説の良さを最大限に発揮できないなんて描かれちゃていますので、これを映画化するには勇気がいるのでしょう。
作品の中に出てくる小説家に井坂好太郎という字違いの同姓同名のキャラクターが、すばらしい活躍をします。この名前には何か示唆的な深い意味があるのかと思ったら、巻末で、ただ小説家の名前が思い浮かばず、自分のペンネームと字違いにしただけなんだとか。な〜んだ。
2012/12/01
採点:★★★★★
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