石持浅海氏の
水の迷宮を読みました。
石持作品を読むのは扉は閉ざされたまま、君の望む死に方に続く、3作品目。
だと思います。
他の作品の記憶も特にないので。
感想ですが、石持氏らしい理論整然とした作品だと思いました。
ある意味、説明くさいとか論理くさいと感じるところもありますが、それでも、あまりにも現実離れした空論になっているわけではなく、分かりやすい説明に留まっているので読みやすかったです。
心の動きや深層心理が所作や言動に現れることによって表現するといった文学的な表現ではなく、あくまでも説明されてしまうので、そういった楽しみ方は薄いように感じますが、特にそんなものを求めているわけでもないので、特に気にはなりませんでした。
ただ、そういったものを好む人たちからはあまり人気がないのかな?とも感じました。
さて、物語の内容ですが、水族館での脅迫事件というか殺人事件がテーマでした。
傾いていた水族館を立て直したメンバーたちのリーダー的な存在だった片山の命日に見つかる携帯電話と、そこに送られてくる脅迫メールから事件が始まっていきます。
脅迫メールと事件、次の脅迫メールと事件と、矢継ぎ早に物語が進むので、一気にストーリーに引き込まれていきました。
また、その中で、主人公や探偵役の深澤がそれぞれの出来事や言動に対して論理的に事件の動機や犯人を推理する過程が読み応えあり、ストーリーそのものを楽しむというよりも、その過程を楽しむ、脳トレ的な楽しみの方が私にとっては勝っていました。
しかも、自分ではそれほど考えるわけでもなく、登場人物たちの会話や議論によっていろいろな論理的思考をトレースすることができるので、脳が楽というのも読みやすかった理由かと思います。
結局、最後は相変わらず釈然としないものも残りました。
殺人事件の動機や証拠の隠し方、隠滅の仕方なんかは秀逸だな〜と感じました。
そのキーアイテムの一つでもあるボラですが、その扱いは見事という他ないような内容でしたが、如何せん、私自身、魚の知識がないので、もっと大きなマンボーみたいな魚だと勘違いしていて、タネ明かしの際には、うわ〜そうだったのか!!!ってよりも、あっ、そうなんだ...って感じの、少しインパクトが薄い印象になってしまいました。自分の無知さがいけないんですけど。
また、そもそもの片山の死のきっかけとなるカリスマ館長の動機にも少し解せないところがあります。まあ、そう説明しているからいいですけど、そんなことでって思うんですが…
扉は閉じたままでも動機のところが釈然としなかったので、石持作品では動機は鬼門なのかもしれません。私にとっては。
更に、その元凶となる片山の夢についてですが、タンカーを改造した水族館のすごさがイマイチ、イメージできずあまり共感できないというか、ちょっと乗れない感じがします。一生懸命すごさを説明してくれていますが…
そして、その夢の実現のために2つの殺人と3人の犯人が許されてしまうというのも釈然としません。そんなのでいいのか?というのも議論の余地があると思うのですが、みんながそっちに疑問も対して持たないまま流れて行ってしまうというのも…う〜ん、ちょっとないかな。
もちろん読んでいる方としてもそっちの結末の方が救いがあるとは思うのですが、でも、ダメですよね…ダメなものはダメという葛藤があるべきじゃないかと…そして、そうすることで世の中の不条理さとか切なさみたいなものがクローズアップされるべきじゃないかな?と感じました。でも、やっぱり小説の中なんだから、人情あふれる結末のこっちの方がいいのかもしれません。はい、そう思います。
ただ、本人たちや周りの葛藤が少なすぎる気がして...深澤に提案されたら思いっきり乗っかってきますもん。
その分、タンカー水槽の実現へのプレッシャーはその分、重くなるんでしょうけど。
とまあ、いつも動機や結末について、すんなりと受け入れることのできない石持作品なんですが、読んでいる最中の心地よさは癖になるので、また、他の作品も読んでみたいと思います。
採点:★★★☆☆
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