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「読書の時間」は備忘録として読書の感想や書評をまとめたサイトです。

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光媒の花道尾秀介

道尾秀介氏の光媒の花を読みました。

 最近、どんどん賞をとっている氏の作品ですが、これは第23回山本周五郎賞受賞作で、直木賞候補にもなったようです。

 これは、期待できそうです。


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 内容ですがオムニバス形式で各々の短編からなっていますが、それぞれの物語の主人公が心に闇を抱えており、ストーリーが進むにつれ、その謎が解けてきます。この謎があっと驚くような内容で、ミステリーの醍醐味も味わうことができます。  
 しかし、それよりもそれぞれの主人公や登場人物の置かれている立場や人生が重たく、ジーンと胸に沁みてくるような内容でした。読んでいて、それぞれの登場人物に感情移入し、何とも切ない感じの余韻が残りました。  
 それぞれの物語自体は多少、救いを残すような終わり方になっており、ちょっとは救われるのですが、どうしても暗い感じの印象がぬぐえません。これだから、文学ってあまり好きじゃないんですよね…

 道夫作品をどんどん読んでいますが、新しい作品になるにつれ、ミステリーとしての仕掛けをメインとした作品よりも、人間の心や人間自体を描く作品にシフトしているのがよくわかります。それでも、ミステリー作品的な仕掛けも切れ味鋭く入れられており、それ自体を前面に出さなくても、読み物としての質というか価値は間違いなく向上していると感じられます。  
 私の好みとは違うのですが、客観的に評価してそう感じます。

 そういった面では、この作品も読み応えもあり、ミステリー的なトリックというか仕掛けも切れ味鋭く、堪能できる作品でした。

 ただ、それぞれ物語の主人公が前の物語での主要な登場人物であったり、ちょっとだけ登場する場面があったりと、それぞれの物語のつながりがあるのですが、それに必然性というか、全体としてのまとまりというか、テーマというかが感じられず、残念ながら、全部の物語を通しての印象として、必要ある?って感じでした。  
 なんとなく、つながりがあると楽しいのですが、それにもっと大きな意味や全体としてのテーマがあってもいいんじゃないかと。それこそ、文学賞にふさわしい作品なんじゃないかと思って…  

 とまあ、偉そうに書いてみたところで、自分じゃあ良いアイデアや解決策も思いつかないので、評論家然とした無責任な感想なんですが、プロの作家さん、しかも一流の人気作家だからこそ期待しちゃうんですよね…

 なかなか、道夫作品で満点を付ける作品がありません…
 好きな作家さんで、作品は楽しんでいるのですが、なんか残念です。

2014.03.04


採点:★★★★









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