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「読書の時間」は備忘録として読書の感想や書評をまとめたサイトです。

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制服捜査佐々木譲

佐々木譲氏の制服捜査を読みました。

警官の血などが有名な佐々木氏ですが、警察小説の新たなジャンルを切り開いたと言われているそうです。
いろいろな文学賞も受賞しているし、最近、テレビ番組かもかなりされているみたいなので、期待できそうです。

制服捜査 (新潮文庫)

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率直に言って、予想以上に面白かったです。

概略は、北海道警の過去の不祥事(着服?癒着?)で、同じ地域の担当は長くやらせないというルールを徹底するということにしたという背景の中、ある小さな街に駐在さんが配属になります。
上段の配慮は分かりますが、でも駐在としては長く地域にいることにより、地域の隅々まで分かるようになることも必要なのは明白で、その葛藤が描かれています。

物語は短編集の集合で、それぞれの事件の物語を独立して楽しむ事が出来ますが、それらの集合体としての1つの芯も通っており、かなり完成度の高い短編集だと思います。


思いがけない事件が起き、そのたびに主人公の川久保が活躍して解決していくのですが、その終わり方が渋いというか大人の解決で、私としては少し消化不良です。

分かる人にだけ分かればいい、自分の犯した過ちに気づいてくれればいいという感じで、勧善懲悪が気持ちよくスッキリとなされるという感じではありません。

特に最初の事件の真犯人にたどり着きますが、川久保の管轄ではないのでそれ以上の捜査は出来ず、事故として処理されてしまいます。
しかし、偶然遭遇した事故で私刑を果たします。自分に対するケジメという感じで。
それよりも、しっかりと犯人を反省させるというか、少なくとも犯人として逮捕することにより、世間(この物語ではごく狭い世界の世間)にしっかりと知らしめて欲しかったと思います。
犠牲者の母親が私刑を果たすなら、少し事情も違いますが...なんかスッキリしないんですよね。

物語を通して、狭い世間の中で自治会や自警団など、自分達の街を守ろうとする地元の人たちが描かれていますが、地元を守ろうとするあまり、事件自体を揉み消したり、犯人を隠蔽してしまったりと別の問題が見えてきます。

果たして川久保や他のよそ者が来て、街の窓ガラスが割れだしたのか?そして、それが大きな事件に繋がってしまうのか?
それとも、窓ガラスはすでに割れていたのか?しかし、住民はそれに気づけていないのではないか?
物語は北海道の小さな街ですが、日本の村社会に共通するような物語だと思います。


ミステリーとしての謎解きなどの醍醐味は少ない作品達ですが警察の物語としてはかなり面白かったです。
それぞれの作品がちょうど良い長さで読みやすいですし。
少し、もう少しミステリーとしての楽しみが増すと最高なんですが...

元郵便配達員の片桐さんが情報を持ち過ぎですし、新しい情報も都合良く提供してくれます。
この人がいれば事件はどんどん解決するでしょうが、すこし都合良すぎるかなと...
事件解決に繋がるヒントや重大な情報はいつもこの人から提供されてしまい、少し、物語としてのリアリティーやわくわく感に欠ける印象です。

とはいえ、かなり満足なので佐々木氏の警察ものをもう少し読んで見ようと思います。

2013/09/07


採点:★★★★









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