コリン P.A. ジョーンズ氏の
アメリカが劣化した本当の理由を読みました。
題名からはピンとくることがないのですが、アメリカって劣化したんですかね?
一般的にそう思われているのか?
世界の警察を自負し、覇権を争って海外にも積極的に出て行っているように見えるのですが...
本書で説明されているのは、アメリカ合衆国憲法の成り立ちとその背景、これまでや現代社会における問題点というか欠点でした。
アメリカが劣化した...というタイトルとは直接的に関係が無いように思えるのですが、中身はとても楽しむ事が出来ました。
合衆国憲法は連邦政府に持たせすぎないためにそれぞれの州の権利や権限を確保するために作られた内容となっていて、とても不完全なものになっているという内容なのですが、驚きでした。
アメリカ合衆国と言えば自由と民主主義の見本のような国家で、その基幹となる憲法はそれは完璧なものだと思っていたのですが、これほど不完全で、かつ、面倒なものだとは思いもしませんでした。
そもそも銃を持つ権利だって、それぞれの州が連邦政府に力を持たせすぎないためにいざという時には武装する権利を確保するために付けられた条項であったとか、奴隷制は財産権で確保されていたなどなど。
憲法では各州の法律をオーバーライドして規制するのはとても難しいようで、合衆国の安全や州間の通商に関係ある事柄など、その適応範囲はかなり絞られてしまうようです。
なので、奴隷が州を跨いで移動することなどを議論する際にも、奴隷は財産であり、それが州を跨ぐことにより州間の通商に関係あることだとの無理な論理で結びつけて議論されることになったなど、おかしな事がたくさん起きているようです。
記憶に新しいところではオバマ大統領の肝入り政策の「オバマケア」。これも連邦政府が各州にこういったものを作りなさい!と勝手に法律を作ることが簡単ではないので、無理矢理の論理で連邦政府が州を跨いだ法律を作ることが出来るということを確認する必要があるのだそうです。
今回は、そのために、若者がリビングで酒を飲みながらTVを見ていることが州を跨ぐ通商に影響を与えるかどうかを議論して、連邦政府がその権限があることを確認したようです。
このように非常に欠陥の多い憲法ですので、民主主義の理念を全うするために、最高裁での判決の判例をもってその欠陥を補ってきたのだそうです。
当初は奴隷も各州や個人の財産として認められており、決して今と同じアメリカ合衆国の民主主義とは同じではありませんが、これらについても最高裁での判例で徐々に今の解釈が構築されていくのだそうです。
ひどい判決を出す判事もいれば、英断ともいえる判決を出す判事もいて、紆余曲折を経ながら構築されてきたのだそうです。
当初、奴隷は当たり前だったので、財産として認められていたり、公共の場で差別されるのは当然だったものが、人種にかかわらず公共の場で同じ教育を受ける権利があるという判決を下した判事のおかげでずいぶん人種差別に対する対応が進んだそうです。
その最高裁の判決にしても、たった7人の判事の多数決で決められてしまうため、時の政権が自分に有利な思想を持った判事を任命しようと画策してきたのだとか。
さらに、判事は自ら止めない限り、その身分が保障されているので、政権が変わったからと言って簡単にはその傾向が替えられないのだそうです。
と、まあ、そういった話を分かりやすく読むことが出来ます。
法律の話となると、小難しくて理解できないため、なかなか楽しむ事が出来ないことが多いのですが、本書は分かりやすく書かれていて、専門的な議論に終始することなく、大局を見失わずに進められるので非常に読みやすかったです。
元、最高裁の判事がエジプトの民主化の際?に招かれて言ったという次の言葉が印象的です。「アメリカ合衆国の民主主義の理念はすばらしいが、私だったら合衆国憲法は参考にしない。」と...
これだけ聞いても意味が分かりませんが、本書を読むとその理由がよく分かります。
2014.09.15
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