Larry Bossidy、Ram Charan氏の
Execution; the discipline of getting things doneを読みました。
この本は、もう10年近く前にアメリカのゴム屋さんの社長さん(イギリス人でしたけど)と話す機会があった際に教えてもらった本です。
確か、GEのJack Welchの話になって、彼の本を読んでいるといったような話から、そしたら、その次はこっちがお勧めだといわれて、そのままになっていた本です。確か日本で買うと高かったから買わなかったんだと思います。
話はそれますが、彼はJack Welchに何度か会ったことがあるそうで、Jackと話していて印象的だったのが、人や組織を動かそうとするとものすごいエネルギーがいる。特に組織の末端まで方針や戦術が行き渡るのには水面に起きた波紋のように、徐々に内側(Jack)から外に向かって広がっていき、外に行けばいくほど弱くなっていく。だから、Jackが組織全体を動かそうとするときには、大きな岩を持ってきて、それを湖に投げ込むようなイメージでガツーンとやらないと組織は動かないといっていたようです。
そして、最後に、だから側近たちはいつもビショビショだよ。と。
先日、インドからの出張の帰りにスケジュールが合わず、空港で6時間ほど待つことになり、その時に空港の本屋で見つけたので購入しました。おかげで、6時間の待ち時間も苦になりませんでした。
その2ヶ月ほど前に、イギリスの空港(ニューキャッスルとヒースロー)でも本屋に寄ったのですがなかったので、丁度よかったです。まさか、インドで買うことになるとは…
娘へのお土産のインドの昔話の絵本と一緒に購入しました。
さて、本書の内容ですが、今読んでちょうどいい内容でした。10年前読んでも、実務をカリカリこなしていた私にはあまり関係のない話だったかもしれません。
この本が教えてくれるのは、企業にとって戦略は非常に重要だけれども、マッキンゼーやらなんやらの超一流コンサルを入れて素晴らしい戦略を練り上げ、外から高額でCEOを連れてきても、成果を上げられない経営者たちがとても多い。
それはなぜかというとその戦略を遂行(Execution)できないからで、では、どうやったらexecutionできるのか、その方法が説かれていました。
私が理解したexecutionのためのキーポイントは下記でした。
これは書いてあることそのままというよりも、自社の上手くいっているところと芳しくないところを鑑みてなるほどな〜と思えるところに無意識のうちに重きを置いた気がします。
まず一つ目として、企業の方針や戦略に沿った、各部門の目標に対してのアクションプランが構築されており、それがフォローされていること。
往々にして目につくのが、本社の役員さんの訪問の際にとってつけたような(時にはそれだけれ見ればすばらしい)戦略を報告しますが、それは地域や各拠点の法人長や一部のトップマネジメントが作っているだけで、実務部隊には全く降ろされておらず、各部門でのアクションプランが全く作られていないということです。大体、いや、ほぼ100%こういったところは1年後に何も達成していません。
もう一つ、アクションプランまでは作らせるが、その進捗をフォローしていないので、実際には何も活動がなされないまま一年が終わってしまい、年初のコミットは全く達成されていないというパターンがあります。本書の中ではフォロースルーと紹介されています。
そして、アクションプランの実現性も確認が必要だと説いています。アクションプランを作ることは作るが、とってつけたようなアクションプランで、夢物語だったり、後々のフォロースルーが不可能な不完全なものではexecutionはできないと。では、どうやってそれが実現可能かを確認するのか?が疑問点として浮かんできますが、この点も説明されています。実行部隊や部門のリーダーと直接話をすることにより、彼らがどれだけ課題を認識していて、進捗具合を把握しているか、問題点〈ロードブロック〉を分かっていてどう対策しようとしているかを聞いて回るのだそうです。ただの紙切れだけでなく、直接話す、management by walk aroundが必要なのだそうです。
この章の内容についてはかなり共感することができました。そして、やはり著者が学者や評論家ではなく実際のビジネスの場面で名物経営者として活躍していた経験があるため、ホントに泥臭い、だけど重要なポイントを説明してくれていると感じました。実際に組織を動かし実行に移させることの大変さとそのためのテクニックは非常に参考になります。実際、これをやるのはめんどくさいことなのですが、そうしないと実行に移せない、移されない、成果が上がらないというのは当然であり納得です。自社でもそうなっていると思います。
次に、人の問題が説明されています。公明正大な信賞必罰での対応、心を鬼にした生殺与奪での対応、コーチングが重要と教えてくれています。当たり前のことで、かつ、とても泥臭く、スマートなビジネス戦略というかマネジメント手法には見えませんが、やはり重要なようです。
また、組織の次の戦略を達成するために適材適所の人事をすることが必要で、それを見極めるのが経営者の役割なんだそうです。当たり前だけど、結構ドライだな〜と思って読んでいたら、でも、やはり不適だと思った人を変えたり、あなたのattitudeやperformanceは問題があると真摯に面と向かって伝えることはとても辛い役目で、それに耐えられないと経営者は務まらないとありました。ドライだけど、やはり、やらなければならないことをしっかりやることが必要で、それは誰にとってもやっぱり辛いんだと。
たとえば、今のポジションとしては十分の能力があり、成果もあげている人がいても、組織を次のレベルに引き上げるには不適切であれば、その人は能力の発揮できる別の部門やポジション、事業に移ってもらい、企業の戦略に沿った人を社内から異動させるか外から雇う必要があるのだそうで…GEではキーとなるポジションにはいつも何人かの候補がリストアップされていたそうです。
日本の企業だと、どうしても人に仕事がついて回り、そのポジションには明らかに適していなくても何とか頑張れ!ってなことが多い気がします。でも、これってやっぱり本人にとっても組織にとっても不幸なんですよね…
あと、経営者としての役割として、実務遂行責任者や部門長などのコーチングがありました。質問によって戦略やアクションプランの弱いところを指摘して、気づかせ、それをよりconcrete(具体的)なものにしていくのと同時に、その人たちを教育・育成していくのも重要な役割と認識する必要があるようです。プレゼンや報告に際しては、優秀な人間ほど、そこに書いてあるもの以外にもしっかりとバックアップやより具体的な内容を準備しているので、決して結果の数字や書いてあることだけでなく、その背景や考え方を質問してやることも必要なんだとか。
最後に、事業の戦略の構築の仕方についてのレクチャーもありました。
印象的なのが決してコンペティターの動向を低く見積もりすぎるな!というのがありました。先々の方針や戦略を決める際に、我々が何かしようとするのと同様にコンペティターも必死で何か仕掛けてくるということを念頭に置いておく必要があるというものです。業界でトップの地位にいると、ついつい忘れてしまいがちなことだが、今の競争相手は元より、異業種からの参入にも気を配っておくことが必要とのこと。
また、その業界の動向にも十分に注意を払っておくことが必要だと繰り返されていました。進もうとしている方向が業界のトレンドと合っているか、5〜10年先のトレンドを読み間違っていないかが非常に重要なキーファクターになるのだとか。そういう面では、欧米系の企業は足元のきめ細かい管理は少しルーズな感じがしますが、業界のトレンドをよくつかんでおり、間違った方向に進んでいないところが多いと思います。むしろ、一緒にトレンドを作っていたり。
そういった面では、自社の私のいる事業は少しトレンドを見誤った感があります。15年前はうまく乗っかることができ、ライバルと差を広げることができたのですが、今から3〜4年後の技術動向は見誤りました。その頃の製品の開発は今、始まっていますので、事業の収益として影響ができてくるのはそのころになると思いますが、完全に出遅れてしまっています。さて、どうしたものか…そのトレンドを見誤った責任者は今はもう前線からは退いていてTVで偉そうに経済や事業について解説していたりします。責任とって欲しいんですけど...
とはいえ、すべて現役責任になってくるでしょうから、これから私たちが何とかしていかなければならないんですよね…
とまあ、非常に参考になった上に考えさせられる本書でした。ただの理論とかじゃなくて、実際に事業に携わった人たちが書いていますので、とても実践的な内容になっているところも説得力がありました。
原書のまま読みましたので、中にはピンとこないところもありましたが、これが英語の問題なのか?ビジネスの実力の問題なのかいまいちはっきりせず、日本語でも読んでみたいなと思いましたが、アマゾンで見たら中古しかないみたいです…
それでもいいけど、その割には高い…日本では売れなかったのかな?
2014.01.25
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