本文へスキップ

「読書の時間」は備忘録として読書の感想や書評をまとめたサイトです。

Since 2012.01.22

買収ファンド和田勉

元日本経済新聞記者の和田勉氏による買収ファンド ーハゲタカか、経営革命かーを読みました。

2002年の出版で、当時日本では馴染みの薄かった買収ファンドについて書かれているようです。



買収ファンド―ハゲタカか、経営革命か (光文社新書)

中古価格
¥1から
(2013/8/8 08:14時点)




本書が書かれた2002年時点では日本では日本では買収ファンドは未だそれほど馴染みがなく、続々と日本に上陸して企業を買収し始めていた時期のようです。
当時私はNYでビジネス・マネジメントを学んでおり、経営の姿の1つとしてのMBOやinvestment bank (private equity)企業の買収と経営指標を良くして売ることで利益を得るビジネスモデルなどはテキストに出てきていたのを覚えています。
経営陣がinvestment bankのような外部から資金を調達して、会社からオーナーシップと経営権を買い取るということでしたが、当時は会社経験も少なくイマイチ、ピンとこなかったことを覚えています。でも、今なら親会社やオーナーなどとの関係から、自由な経営がしたいと思う経営陣がいても不思議じゃないなと理解できます。もしくは会社の戦略としても業績の良い・悪い事業を独立させるためにMBOすることもあるかなと理解できます。

ところで、買収ファンドについてですが、経営が破綻した企業を二束三文で買い叩いて、採算の良い部門や資産を切り売りして利益を上げるようなハゲタカファンドと呼ばれるファンドが一躍有名になってしまったので、そちらのイメージだけが先行してしまっているが、どちらかというとこれは買収ファンドの中ではマイナーな方のようです。

それよりも経営にてこ入れすることによりもっと利益体質の良くなる(よく見えるようになる)企業を買収して、徹底的に筋肉質にして企業価値を高く(見えるように)して何年か後に売却して利ざやを稼ぐ、経営破綻した企業を買い取って企業再生のための道筋を付けて経営が軌道に乗ったらその際の適正価格+αで売って利益を上げるというビジネスモデルの方がメジャーなようです。


本書の中ではこれらの手法や目的などが結構肯定的に書かれています。
手法についても買収先の企業にきちんとしたマネジメントチームがいれば彼らにそのまま経営は任せて、適度のアドバイスや最初の軌道に乗せる道筋を付けることをするのが仕事で、彼らと一緒に働く姿勢が強調されていました。

しかし、実際に買収された企業の経営状態を見る機会があったのですが(買収される方は本書には出てこない企業、買収する方は本書にも出てくる)、3〜5年後の収益体質の改善が優先課題になってしまっているので、その先の成長や収益源のためのリソースへの投資は徹底的に搾られてしまっていました。生産している製品が受注が決まって立ち上がりまで3年ほどかかる製品だったため足元の生産能力を越えてしまっていれば投資を認められず、いまある売り上げの利益を最大化することに注力していました。
この企業は決して経営が破綻していた企業ではなかったのですが...
結局、この会社の製品とシナジー効果を期待できる企業がこの企業を購入することになりました。その後は、必要な研究費用や設備投資もするようになり、順調に収益体質が良くなっています。ファンドの配下だった頃の無理な経営でなくて、技術力の強みと製品戦略を活かした順調な成長を見せています。

と、ファンド側からは経営を最適化するためにアドバイスや管理など、経営コンサルタントのようなことをしていると言っていますが、近視眼的な財務諸表や経営指標に沿ったアドバイスしかしないのが一般的で、自分たちでは何も解決できないことが多いので、本当に製品やマーケットをよく知っている経営陣には決して敵わないと思います。
経営をよく知らない経営陣や外部からの新鮮な意見を聞く程度には価値があると思いますが...

経営体質を良くして転売し利潤を得るというやり方も、買収した企業の贅肉を削ぎ落として試合前のボクサーのように限界まで搾った体にして売るのもある意味"ハゲタカ"的なビジネスとも言えると感じます。

2013/08/07


採点:★★★☆☆









おすすめ購入先


   イーブックオフ  おすすめ!
   価格競争力が抜群!愛用のサイトでいつもまとめ買いしています。Tポイントも使えます。

   アマゾン
   品揃えは抜群!本だけでなくCD・DVD・日用品・家電・おもちゃと品揃え抜群。送料無料も魅力!

   紀伊國屋書店
   紀伊國屋書店のオンラインショップ。紀伊國屋ポイントをお持ちの方におすすめ。