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「読書の時間」は備忘録として読書の感想や書評をまとめたサイトです。

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堂々たる政治与謝野馨

元衆議院議員で数々の大臣ポストや党の要職を歴任した与謝野馨氏の堂々たる政治を読みました。

与謝野氏は歴史の教科書にも載っている有名な歌人の与謝野鉄幹と与謝野晶子の孫で、麻生内閣では財務系の大臣を3つほど掛け持っていた印象が強く残っています。

自民党の要職を歴任しているだけでなく、政権が困った時に大臣を何個も掛け持つなんて、どんなすごい人なんだと興味を持っていたのを覚えています。


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非常に満足の一冊でした。

与謝野氏の生い立ちから何故、政治家を目指すことになったのか?
学生時代の考え方やサラリーマンとしての生活の様子、その時に学んだことなど、率直に書かれています。
まあ、それほどすごい波瀾万丈の人生って程でもないと思いますが、おじいちゃんとおばあちゃんがすごい。
父親も外交官で、小さい頃から外国文化に触れる機会も多く、これらの経験から物事の見方・本質を捉える力を養っていったんだなと感じました。
苦手だった学校の授業も何故か英語で学んだら良く理解できたとか。

政治の話についてですが、安倍政権では官房長官として安倍総理に仕え、安倍総理についての与謝野氏の人物評や政治手法の評価、あの辞め方についての意見などが語られていました。
私は安倍元&現首相に関しては、あの最低の辞め方から全く信頼を置いておらず、大嫌いなので、与謝野氏が安倍さんの良さを語っている当たりに、少し安倍さんへの見方が変わりました。安倍さんの人間性はすばらしい人っぽいです。
政治の腹芸や裏工作は苦手で、真っ直ぐな人のようで、そこが好きなようでした。
だからこそ、うまく政権を運営できなかったんだと思いますが...
でも、まあ、今回もアベノミクスで円安スタートして順調なようですが、そのうち、物価は上がるけど(企業が便乗して)給料は上がらない。失業率や非正規雇用は改善したいため政権への批判が高まると、投げ出すんじゃないかと思っています。

あと、小泉政権についても、その手法や成果、反省点などをストレートに語っています。
小泉氏はある意味奇人で天才だからこそあの手法をとることができ、あれだけの人気を集めることが出来たんだと分析しています。分析はしているけど、普通の人にはあんな事は出来ないので真似は出来ないだろうと。効果的な手法ではあったとしても。そういう面では麻生さんはちょっと真似しすぎて失敗した感もあるかと...
そして、規制緩和の中身についても持論を展開しています。規制緩和は小泉政権で初めて言い出したわけではなく、昔からあるけれどやった事は評価していました。ただ、小泉政権の反省点としてはセーフティーネットが不十分だったと分析されています。

その他、名幹事長と呼ばれる梶山静六氏や野中広務氏についても語られています。
経済の成長と日本の経済の復活のための政策についても持論を展開されています。
消えた年金問題や、財政再建についても理路整然と説明してくれています。財政再建に向けては財政の無駄を省いても赤字額に対しては全然金額が足りないので、それは本質的な解決にならず、消費税率UPなどの増税が欠かせないとの考えのようです。
確かに本質的に解決するためには増税は避けられないのかもしれませんが、でも、やっぱりその前に、根本的な解決にはならなくても税金の無駄遣いを完全に無くすぐらい、ぎゅーぎゅーと今の無駄を無くすことをするべきだと私は思います。無駄でも。
氏も言っている通り政治のお金の使い方は日本国の富の再分配であり、みんなに負担してもらわなければならないのですから、その使い道に絶対に無駄が無いと自信を持って信じられるぐらいやって欲しいんですよ。国民は。
増税が必要なこともちゃんと説明してくれれば分かるはずですし。そんなにバカじゃないでしょ。

あと、大学を卒業後、日本原子力研究所に中曽根氏の口利きで入るのですが、そこで最初の上司だった係長さんが今でも一番頭が切れる人だったと振り返っています。人に説明するときにはメモを持っていくことを教わったのもその人からだったとか。
福田首相に肝炎の薬害の一括救済を直訴する際には、その教え通り話す内容を紙に書いていったとか。
この人はとても頭が良く、何でもすぐに覚えてしまっているのに良くメモをとっていて、それを何故かと聞いたところ「だって、一度書いたら絶対忘れないだろ」との回答が返ってきたのだとか。

頭がよいという話では、私は高校の時の世界史の教諭からこんな話を聞きました。
この先生の授業は黒板にびっしりと細かい内容まで書く先生で、授業のノートを取るのだけで精一杯でした。
しかし、何年か前の先輩は一度もノートを取らずに腕組みをしたまま聞いていて、テストはいつも100点だったとか。ただ、一度一問だけ間違えて98点を取ったことがあり、その生徒にどうしたんだ?珍しいなと聞いたところ、「だって、先生が授業でそう言っていたから」との回答が返ってきたのだとか。
他の生徒のノートを確認すると、確かに間違えて教えていたのだそうで、これには驚いたようです。ホントに家で勉強とかしているわけでなく、授業を一回聞いただけで覚えてしまっていたみたいです。
当然のように現役で東京大学に入ったのですが、在学中に栄養失調で無くなってしまったそうです。
私もこの授業(90分)を受けており、テストを受けているので、同じ事を出来るなんてとても想像も出来ません。ホントすごい人っているんですね...
話が逸れました。

本書を読んでいると与謝野氏の政治に対する姿勢が伝わってきて、謀略や権力闘争には興味を示さず、本当に政治で日本を活力のある国にし、国民の平和で豊かな生活を目指していると感じました。
それも理想的なあるべき論や耳障りの良い平和主義的なことを言うだけでなく、とても現実に根ざした政策を考えていることが伝わってきました。
これだけの要職を歴任した人が、裏工作や権力争いとは関係なく、これだけのポストに就いたというのは読んでいて、なんか嬉しかったです。

ホント、満足のいく一冊だったのですが、これだけの要職にいた人が赤裸々に政治について語っているなかで、もっと泥臭いというか汚い面についても語って欲しかったと思います。密約とか、表だっては言えないような他国や党内・外の様々なしがらみや制約についても知りたかったです。
当然、これだけのポストにいれば色々知っているでしょうから。
とはいえ、ここまでは大っぴらに書くわけにはいかないのだと思いますが。墓場まで持って行くんでしょうね。

2013/07/10


採点:★★★★









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