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「読書の時間」は備忘録として読書の感想や書評をまとめたサイトです。

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渡辺恒雄 メディアと権力魚住昭

プロ野球界の重鎮で政界、経済界に抜群の権力を持つ渡辺恒雄氏について、かねがね思っていたのが、この人は何故こんなに権力があるのだろう?という疑問です。

周りの反発を気にもせず、なんか思いっきり自分のやりたいようにやっている気がするし、正直言って余りよい印象はありません。
それなのに何でみんなこの人の言うことを聞くのか?こんなやりたい放題を他のTV局や新聞社がもっと大っぴらに批判しないのか?

そんな疑問の中で、以前読んだ魚住昭氏の「官僚とメディア」が業界の内情などが書かれており、以外とよく、その中で氏が渡辺恒雄氏について書かれた本書があることを知り、購入してみました。

渡邊恒雄 メディアと権力 (講談社文庫)

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結論から言えば、とても大満足の1冊になりました。

渡辺恒雄氏の幼少からの生い立ちから高校受験の失敗、戦争に反対する中で哲学に傾倒していく姿、東京大学での共産党員としての活動と権力闘争に敗れて追いやられる過程など読売新聞社に入る前の氏の経歴から、読売新聞に入ってから政治記者として名を馳せ、社内の権力闘争と社内への影響力を得ていく姿が描かれています。

上記の過程は周りに人間へのインタビューから状況を把握しているようですが、本人にもその正否を確認しているところがとても好感が持てます。しかも、大概本人は否定していて、大きな流れではそんなこともあったけど、でもその行動の意図は違うところにあったとか、本人は何もしていないけど周りが勝手にそう思っていると言います。
ホントのところがどこにあるのか分かりませんが、世の中なんてそんなものだろうなと思い、奥深さを検討しました。物事を進める際に何となく大きな流れができれば、個人が細かいことをしたり指示しなくても勝手に進んで行くものだな〜と最近感じるので。


さて、最初の私の疑問だったどうして渡辺氏がこんなにも権力を持っているのかということについても、だいたいのイメージを得ることができました。

読売新聞の政治記者として岸総理付の記者になり、その後、大野伴陸に気に入られ秘書以上に情報を持つことのできる立場になったり、そこからつながる中曽根や他の政財界や財界との人脈などがこの人の確固たる権力を維持させたように思えます。

中には昭和のフィクサー児玉誉士夫との人脈、元陸軍参謀で伊藤忠商事の会長、中曽根の懐刀として活躍した瀬島龍三との人脈等々、各階の実力者との人脈が築かれていきます。

なかなか、初めてあった人を惹きつける魅力があったようです。
今の氏の立ち振る舞いを見ていると、そんな魅力的な人物には見えないのですが...


これと平行して社内での権力闘争も勝ち抜きます。
入社して間もなくは創業一族の正力氏、その後を継いだ販売の天才、務台氏がいるから社長になるのは無理だろうが、副社長までにはなってやると言っていたようです。しかし、結果的には社長になるのですが...
その過程を見ていると、正力氏や務台氏は死の間際の80〜90歳代まで権力を持っていたことにびっくりしました。こういった会社ですから渡辺恒雄氏もこの年になっても権力を手放さないのかな〜と思います。

一方、社内で権力を固めるためには、部署間の権力争いがあり、社会部を骨抜きにし自分の言うことを聞く人を集めていったりと、その姿が描かれています。
その中で、先日無くなった日本テレビの社長だった氏家氏が東大の同期で、読売新聞でも親友であり出世を争うライバルでもあったようですが、途中までは出世を氏家氏がリードします。しかし、務台社長に疎まれ、日本TVに副社長として出され、出世への道が途絶え、しかも、その後日本TVさえも追われていまいます。
氏家氏などは渡邊氏の画策だと疑ったこともあるようですが、当人は全く否定しています。

その後、渡邊氏が読売新聞の社長になったあと、務台氏に干された氏家氏と長島氏(巨人の監督として)を呼び戻し、彼らとしては改めて道が開けたのだそうです。
だから恩に着ていた長島さんは、最近の読売の内乱の際に訳の分からない渡辺恒雄氏の擁護コメントを発表したのかなぁと思いました。あれで長島さんはかなり株を落としたと思いますが...


とまあ、基本的にはナベツネさんは全然好きじゃなく、むしろ嫌いな老害のおっさんとさえ思っている私ですが、本書は楽しむ事ができました。氏の書いた本じゃないですし。

ただ、新聞記者時代に渡邊さんの出した本が結構あるらしく、中身は政治の裏側など興味深そうです。これだけ、政界の中心に入り込んでいた人ですから。ホントのことを書いてあるかは分かりませんが...
でも、古すぎるので読まなさそうです。

2013/01/19


採点:★★★★★









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